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「転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件」限定しおり①

   転校生

 眩しい日差しが照り返し、晴れ渡った青空に太陽が燦々と輝いている。
 最近汗を滲ませる日も多くなり、今年も夏が始まろうとしていた。
 春希にとって、夏は特別だ。
 幼い頃、彼(、)と過ごした夏の日々が、今なお記憶の中で鮮やかに輝いている、
 だから夏になると、どうしてもあの時の夏を思い出してしまい、今(、)と比べてしまう。
 今の春希は成績優秀、文武両道、入学してからすぐに生徒会の手伝いを買って出て、見た目も清楚可憐なこともあり、絵に描いたような才媛だ。傍から見れば、キラキラした世界にいると思われているかもしれない。
 しかしそれは周囲と軋轢を生まず、無難にやり過ごすための演技。ただの処世術。
 そのため、誰にも本心を見せることもなく、ずっと一人。
 優等生という仮面越しに見える世界は、やけにくすんで見える。
 周囲から向けられる視線を意識して、良い子たらんと必死に擬態するさまはなんて滑稽。
 このまま誰とも交わらず、皆と壁を作り、起伏のない凪いだ孤独な日々を過ごしていくのだろう。
 あの夏に帰りたい。
 だけど、それが叶わないことなんてわかっている。
 遥か遠い記憶でずっと友達だと誓った彼の姿も、ぼやけつつある、そんなある日だった。
「転校生、ですか?」
 ある日の放課後、生徒会の手伝いで職員室に寄った時のこと。
 そこで偶然顔を合わせた自分のクラスの担任教諭から、そのことを告げられた。
 用件は転校生用の、予備の机と椅子の手配。
 その時は、この時期に珍しいと思った程度。
 しかし続く担任教諭からの言葉は、聞き逃すことが出来なかった。
「あぁ、月野瀬っていうところから来るらしい」
「っ、月野瀬って、西の方にある、すごい田舎の……?」
「よく知っているな。慣れないこともあるだろうから、転校生に目を掛けてやってくれ」
 春希は久々に聞く懐かしい地名に、まさかという思いから胸が跳ねた。
 あの田舎に同世代なんて限られている。
 ましてやこのクラスにやってきそうな同学年なんて、一人しかいない。
 もしかしてと昂る期待を、理性をもって早とちりするなと、必死になって律しようとする。
 だけど高まる鼓動は、どうやっても抑えきれなくて。
 落ち着かず、そわそわしっぱなしの日々を過ごし、ようやく訪れた転校生がやってくる日。
 教室に緊張した転校生が入ってくるのを目にした瞬間、春希の胸に歓喜と郷愁、驚愕といった様々な感情が駆け抜けていった。
 転校生が誰かなんて、一目でわかった。
 背も随分伸びた。
 顔立ちだって、まるで別。
 だけど、あまりに雰囲気が昔とそっくりなのだ。
 あの日の夏が今と重なり、春希の周囲がにわかに色付き、鮮やかに輝き出す。
 そんな、わくわくした期待で胸が高鳴っていく。
 挨拶を終えた隼人がこちらへ向かってやってくる。
 一瞬、こちらと目が合うと、 くつくつと、笑いを堪える笑みをこちらに向けてきた。
「よろしくね、二階堂さん(、、、、、)」
 まるで初対面かのような挨拶。
 だから春希も、まるで初めて顏を合わせたように挨拶を返した。
「よろしくね、霧島くん(、、、、)」
 きっと今年の夏は、何かが変わる。
 そんな確信から抑えきれない笑みが零れた。