強気なお嬢様が俺の料理で甘々に

著者:雨宮むぎ
イラスト:Nardack
クラスでは犬猿の仲
そんなお嬢様も料理の前ではとろけちゃう!!

ストーリー
ある日、副料理長が独立することになり、その後任につくための条件としてオーナーに提示されたのは、
1か月間住み込みでオーナーの娘に料理をふるまうことだった。
なんと、その相手は容姿端麗で、(俺以外には)社交的で優しいクラスメイトの姫野結奈だった!
姫野は料理を出す前からクビを宣告してきたが、いざ一口食べさせてみると……。
「っ美味しい――。けど、あんたのことは認めないんだから!!」
頑なに明人を認めようとしない結奈だが、絶品料理の数々に強気な態度だってとろけちゃう!?
新食感ラブコメ開幕!!
登場人物

姫野結奈(ひめのゆな)
明人のクラスメートで、三ッ星レストラン〈フリメール〉オーナーの娘。
明人には厳しい態度を取っているが……。

霜月明人(しもつきあきと)
〈フリメール〉で腕をふるう高校生料理人。
副料理長昇進の条件として、姫野の家に住み込みで料理を作ることに。

七瀬明日香(ななせあすか)
結奈の家で使用人として働いている。
礼儀正しい性格。明人たちのクラスメートでもある。

秋月穂香(あきつきほのか)
中学二年生。
明人を師匠と呼んで慕っている。

百瀬小春(ももせこはる)
明人たちのクラスメート。
料理部に所属しており明人の手伝いをすることも。

小桜陽葵(こざくらひまり)
明人たちのクラスメート。
料理部に所属しており明人の手伝いをすることも。
特典一覧

特別SS公開中!
『お嬢様は悔しがる』
ダイニングルームは剣呑な雰囲気に包まれていた。
腕組みしたまま仏頂面でこちらを睨んでいる少女は、姫野結奈。
明るいブラウンに髪を染め、垢抜けた恰好をしているとびきりの美少女だ。俺のクラスメートであり資産家の娘でもある。親が仕事の都合で海外にいるため、目を回すような大豪邸で使用人と二人で暮らしている。
「来たわね」
「ああ」
「前も言ったけど、一度でも美味しくない料理出したらあんたはクビよ。いいわね?」
「はいはい。わかってますって」
俺――霜月明人はフレンチの一流店で料理人として働いていたのだが、ひょんなことから姫野邸で専属料理人として雇われることになった。
それはいいのだが、大きな問題が一つある。
何かというと、姫野は俺のことが大嫌いなのだ。
教室では隣同士なのだがしょっちゅういがみ合いになる間柄だった。そんな姫野は一度でもまずい料理を出したらクビにすると宣言している。俺はアウェー感たっぷりの中、運んできた料理を姫野の前に置いた。
「はいどうぞ」
「これはどういう料理なのかしら」
「魚料理のリクエストだったからな。ゆでた真鯛をケールのスープに載せて、いくつかのハーブと合わせてみた」
「ふーん……」
姫野はじっと見つめていたが、おもむろにフォークを手にとった。
そして料理を口に運び――そこではじめて柔らかい表情を見せた。
「うわあっ、美味しい……」
そんな姫野の幸福そうな笑顔に俺は思わず見とれてしまう。
やっぱり笑うとめちゃくちゃ可愛いんだよな、姫野は。
普段俺に向けられるしかめっ面とのギャップもあって、ドキッとしてしまうのだ。だがそうしていると姫野は俺の視線に気づいたらしく、頬をちょっぴり膨らませた。
「な、何よ! 文句あるのかしら!」
「文句というか、お前、笑ってれば可愛いのになと思って」
「なっ……」
すると姫野はかあっと顔を赤らめ、それから怒ったように早口でまくしたててきた。
「な、何言ってんのよあんた、結奈のことそんな目で見てたわけ?」
「そんなことより料理の方はどうだったんだよ」
「それは……お、美味しかったわよ」
悔しそうに呟いた姫野は、しかしすぐに強い口調で言葉を続けた。
「で、でも明日もこれくらい美味しい料理出さないとクビにするから! あんた覚悟しておきなさい!」
「……はいはい」
住み込みでの専属料理人としての生活は、はじまったばかりだ。
俺に対して当たりの強いこのお嬢様が、文字通り甘々になっていくのは――もう少しだけ先の話である。