葡萄大陸物語 野良猫姫と言葉渡しの王
これは、“言葉渡し”の少年が、
ひとりの姫と出会い、“王”となる物語――。
『お主、名は何という！』
『メルです。メル・アルカート』
『メルか、良い名じゃ、気に入った！』
様々な種族がひしめき合い、“葡萄”のように国が乱立する大陸の小国ランタン。流浪の少年メルは、多言語を話せる特技をランタン王に買われ、豹人族の姫シャルネの教育係に抜擢される。己の奔放な振る舞いにも常に優しいメルに、どんどん惹かれていくシャルネ。
『私が新たなランタン王です！ 僕のような弱輩が信用に足るかは、自らの目でお確かめ下さい』
そんな折、大国との政略結婚を控えた彼女は相手の王を怒らせ、婚姻は最悪の形で破談に。二国間の緊張が高まる中、次期ランタン王に任命されたのは、なんとメル!? 王として彼が取った起死回生の策は、“シャルネと結婚し、豹人族の支援を取り付ける”というものだった！
言葉を操り、人を繋げ、敗戦必至の大戦に挑む！
弱小王国の下克上ファンタジー、ここに開幕！
メル・アルカート
”アルカート”という流民団で生まれ育った17歳の少年。葡萄大陸に存在する全ての言語が話せるという特技ゆえシャルネ姫の教育係に任命される。ランタン国王の崩御後、なりゆきで新たな王となるが……。
シャルネ・ブラン
豹人族の国ビョウの末の姫君。13歳。大国バツとの政略結婚が決まっていたが、キリンを庇って婚姻は破談に。言葉を教えてくれるメルに好意を抱くように。
キリン
シャルネが幼い頃からの世話役。厳しい言葉の反面シャルネの幸せを誰より願っている。身体能力に優れた豹人族の中でも特に戦闘能力に長けた武人。睨まれたら怖い美女。17歳。
ギン
知略と頭の回転の速さを認められてランタン国王に雇われた軍師。戦がない時は文官として城に勤めている。19歳。皮肉屋で嘘つきな性格。
言葉渡し
異種族間も言葉を通訳する職業。高等教育を受けた貴族が就くことが多く、流民出身のメルが採用されるのは異例。ランタン王は、種族が入り乱れた流民団で育ったメルの、特殊な環境による差別意識のなさも買っている。
豹人族
見た目はほぼ人間と同じだが、尾と柔頭角（猫耳）の両方を持つ種族。狩猟民族で、人間族に比べて身体能力が驚くほど高い。女性男性問わず、即戦力として肉体労働も担う。
葡萄大陸
大小さまざまな種族と国がせめぎ合う大陸の通称。
大きな山脈が東西を分断し、人間のほか、豹人族、エルフ、人狼などの亜人も入り乱れる。三方を強国に囲まれたランタンにとって、外交は死活問題。
