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スニーカー大賞

スニーカー大賞最終選考結果発表!

第17回スニーカー大賞 最終候補作品

あらすじ

彼女たちのメシがマズい100の理由 高野文具

一人暮らしの愛内葉介は、幼馴染みの胡桃沢ゆすらに食事の世話をしてもらうことに。ところが、ゆすらは恐るべき味音痴であり、「食えなくはないが、リアルにマズいメシ」に苦悩する日々を送ることになるのだが!?

裏ギリ少女 榎本 中

ある朝、一ノ瀬は交通事故の瞬間を目撃する。だが、トラックに轢かれたはずの少女には傷ひとつなかった。その少女・春風幸は一ノ瀬のクラスの転校生だったのだが、彼女の周囲で次々と不可思議な現象が発生しはじめる。

三次元への招待状 天音マサキ

おたく少年ヒイロに届いた"願いが叶う"手紙。いたずらと思いながら「二次元の彼女が欲しい!」と書いた翌日、まさに現実ではお目にかかれないような美少女が次々と現れ、告白され、ついには一緒に住むことになり!?

魔王と勇者の牧歌的な恋愛 宮地 主

魔王城に乗り込んだ勇者少女が目を覚ました時、そこはのんびりとした牧場だった。そしてそばには魔王がいて「勇者ちん、一緒に暮らそうよ」と言いだし!? キレ気味の勇者と心優しい魔王の騒々しくも牧歌的な日常が始まる!

負け犬Strike 96

夏休み明け、なぜか急激にモテはじめたクラスメイト。どうやら彼は「主人公」属性を手に入れたらしい。そのハーレム状態を眺めるだけのモブな「僕」は、「主人公」なクラスメイトに下克上を誓い、行動に移るが——。

選考委員 選評

岩井恭平

第6回角川学園小説大賞〈優秀賞〉を受賞し『消閑の挑戦者』でデビュー。その後『ムシウタ』シリーズが累計100万部を超えアニメ化もされる。現在、新シリーズ『サイハテの救世主』も刊行している。その他、マンガ原作や『サマーウォーズ』のノベライズなど、活躍の幅を広げている。

『魔王と勇者の牧歌的な恋愛』は宿敵どうしが恋愛関係に発展する難しさやジレンマがコミカルに描かれていました。二人の関係性に集中しすぎていて、世界設定が掘り下げられていないのが惜しいところ。

『彼女たちのメシがマズい100の理由』は非常に読みやすく、幕間に特殊なアイデアを盛り込むなど、構成も面白かったです。可愛いけど衝撃的なヒロインたちに翻弄される主人公が、今後もっと個性的になることを期待します。

『三次元への招待状』はアイデアが面白く、主人公が巻き込まれる嬉しさや葛藤も共感できました。登場人物たちのかけ合いも面白い。それだけにヒロインたちの行動やイベントに意外性が欲しかったところです。

『裏ギリ少女』は、良くまとまった作品でした。ヒロインの意外な能力や怖いライバル、ラストの盛り上がりなど、設定や構成にそつがない。もっと派手な展開があれば、力のトンデモなさが強調されたと思います。

『負け犬Strike』。非常にノリが良く、全編通して主人公の徹底した負け犬っぷりが潔い作品でした。クライマックスまで読者を引き込むために、中盤に意外性や物語の転換点があればもっと良かったと思います。

 総評。今年はコメディ風の作品が揃いつつ、ジャンルよりも作者の個性が尖り輝くラインナップになりました。共通するのはアイデアの面白さ。「自分はこういうのが書きたいんだ!」というアイデアを、それぞれの武器となる文章で力いっぱい振り回すパワーを感じました。それほどの可能性に満ちたアイデアを百パーセント生かし切れずにいるのも共通するところですが、将来性は申し分ないところでしょう。文章を書くのが好きだと伝わってくるものばかりだったので、今後の経験で限界以上に自分たちの個性を引き出していってくれるものと期待できます。

THORES柴本

2005年にアニメ化されたスニーカー文庫を代表するタイトルのひとつ『トリニティ・ブラッド』の挿絵でデビュー。『バチカン奇跡調査官』シリーズ(角川ホラー文庫)、『ヴァンパイアハンター・リンカーン』(新書館)のイラストなど、その独特の世界観で知られるカリスマイラストレーター。

『魔王と勇者の牧歌的な恋愛』ゲーム感覚の軽快さやのどかな可愛らしさは良いですが、世界観が定まらずキャラの背景や経緯の説明不足による唐突感があります。もう少し読み手に対し丁寧に説明をする必要があると思いました。

『彼女たちのメシがマズい100の理由』料理番組的な解説を挟むという構成は中々面白く丁寧ですが、主人公がただマズいを言うだけなのが残念です。肝心の料理をイラストにするには地味なので、そのマズさが見た目で伝わらないのは課題かと思います。

『三次元への招待状』王道キャラによるハーレムものですが、折角なので他の世界から来たキャラの経緯や背景はもう少し丁寧に描くと良いと思います。イベントの多さと見せ場の盛り上がり不足がありますので、整理してメインを強調し明確にすると良くなりそうです。

『裏ギリ少女』冒頭の衝撃的な映像がイラストとして浮かび、斬新な設定とタイトルからの期待感がありますが、全体的にあっさりした印象があります。アイデアは面白いので能力の斬新さや効果にもう少し工夫や意外性があると良くなるのではないかと思います。

『負け犬Strike』学園が舞台の異能バトルチーム的な王道設定の《主人公》がいる事を前提にし、《脇役》が主役となりその視点で描いたプロローグ的な構成という準備作品的なアイデアは面白いと思いました。だだし作品としての主役があくまで脇役位置である傍観者の為に、中途半端な作品の印象になって仕舞っているのが残念でした。

今回の二次選、三次選はこれまでよりいっそう具体的な書籍化をイメージしながら行われたとの事で、面白くはありましたが全体的に特に突き抜けた印象の作品がなかったのは少々残念でした。イラストレーターの視点でと4年間選考委員を受けまして、色々な作品に出会い、また、面白くもあり勉強させて頂きました。今後も新たな作品や未来の作家に大いに期待したいと思います。本当に有難うございました。

竹田青滋

毎日放送入社後、2002年に放送された『機動戦士ガンダムSEED』のプロデュースを担当。その後『鋼の錬金術師』、『コードギアス 反逆のルルーシュ』、『青の祓魔師』などを担当し、アニメ界のムーブメントを作り続ける。

 今年で、4年目の選考会でしたが、今回は選ばれたのが三つとも学園ラブコメものという結果になりました。いずれも、楽しく読めるのですが、それぞれについて、もう少し工夫すればもっと面白くなると思った点などを記しておくことにします。

 まずは、優秀賞の『裏ギリ少女』です。裏切るという単語のもつ語感がいいし、冒頭からスピード感のある展開は、読者をどんどん引き込んでくれます。美少女3人と主人公の男子とのかかわりが次々と繰り広げられて行くあたりは、読み進む楽しさがあります。
裏切り体質という特異な能力を少女にもたせているのが、新しいのですが、好きな人に触れられないという悲しさをもっと強調するような掘り下げ方をすれば、今風な友情のあり方を提示できたのではと残念な気がしました。そうすれば、裏切るという言葉とは正反対の絆やつながるという感情に接続できて気持ちいい感情が描けたかもしれません。キャラの書き分けや読ませる話の運び方は達者なので、構成をもう一度改めて敲けば、もっと良くなる予感がします。

 同じく優秀賞の『彼女たちのメシがマズい100の理由』は、料理下手の女子3人の極マズ料理に責め苛まれる男ひとり、マゾヒスティックな描写が快感に思えるほどいい感じでした。料理番組風の展開などは新しい試みで面白いのに、肝心の料理のマズい、うまいに関しての表現が淡白すぎてあっけないのは、非常にもったいない気がしました。幼馴染、碧眼の美少女などなど、興味深いキャラが満載なのに、それぞれの関係性を深められていないのは惜しいです。グルメものの描写力を鍛えて、再度正面からトライするべしと思いました。

 特別賞の『三次元への招待状』。バーチャルキャラが、具現化したらという妄想が現実になり、少女4人と一緒に住むという設定が楽しいし、マゾっ気満点な描写は大いに満足できます。世界の崩壊などという大上段に構えた設定もあるのですが、回収せずに終わるぐらいなら、そこへは行かない方が親切というものでは、と突っ込みたくなります。学園ものとしては、キャラもいいので生かし方と回収を工夫すれば続編も可能な気がしましたし、期待もできると思います。